SFCスピリッツ
ゲノム情報解析から生物学への道
沼田興治さん
開発研究員、独立行政法人理化学研究所バイオリソースセンター
動物変異動態解析技術開発チーム
2001年環境情報学部、2003年政策・メディア研究科修士課程、
2007年政策・メディア研究科後期博士課程
僕は現在、茨城県つくば市にある理化学研究所で、研究員として「非翻訳性RNAのゲノム情報解析」をおこなっています。みなさんご存知のとおり、生物の遺伝情報は、細胞一つ一つのなかにあるゲノムDNA分子に書き込まれており、そこから必要な情報を取り出したいときには、RNAという別の分子に転写し、それをもとにタンパク質に翻訳するという過程をふみます。
ヒトゲノムが解読された2003年頃、ゲノムDNA全体でRNAになる領域は、ほんの数パーセントと言われていました(それ以外はガラクタ領域)。しかし研究をすすめていくと、ゲノムDNAのほとんどがRNAになっているのではないか、と思われるような報告が相次いできた。さらに、その多くは「タンパク質にはならない非翻訳性のRNA」である可能性が示唆されてきました。僕は政策・メディア研究科在学中、いち早く非翻訳性のRNAに関する研究成果を論文誌に発表し、いまだにそれを掘り下げようと、いろいろな角度から研究を続けているわけです。
僕が現在所属するチームは、特にネズミの着床後の初期発生に注目し、そこでどういった種類の遺伝子が、どのようにふるまい、そのふるまいが何によって制御されているのかを明らかにするために研究し、またそれを解析するツールの開発などもおこなっています。遺伝学や発生生物学をバックグラウンドとした研究者たちとの議論は、「生物学をやりたい僕」にとって非常に有意義です。
そもそも、僕が最初にゲノム情報解析をはじめた(もう10年も前のことになりますが)理由は、「そこにゲノム情報があったから」です。別に生物のことなんてどうでもよかった。けど気づくと生物学をやりたくなっていました。ヒトゲノム解読によって生命の設計図が明らかになった、といわれたのも今は昔。今、世界中の研究者たちは、ゲノムに書かれた情報がどのようにして具体的な生命現象につながっているのかを、様々な角度から研究し記述しています。ゲノム情報学は歴史も浅く、まだまだ生物学との隔たりはありますが、ゲノム情報解析をバックグラウンドとしたぼくのような人間が、生物や現象のことを考えて実験のデザインをし、生物の研究をするようになる日が近いうちにきっときます。そして一番大事なのは、「僕自身が気になるから、面白いから」というモチベーションに他なりません。
長くなってしまいましたが、最後に在学生へのメッセージ。
今「好きなこと」や「自分に向いているもの」がない人も、なんでもいいから嫌じゃないものを「本気で」はじめてみるとよいかもしれません。少なくとも僕はそういうタイプで、あれから10年たちましたが、今、日々をいきいきと過ごしています。
独立行政法人理化学研究所
http://www.riken.jp/
理化学研究所バイオリソースセンター
http://www.brc.riken.jp/
(掲載日:2008/02/13)
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